出版物

笹川汎アジア基金
ビジネス・ケーススタディ手法のベトナムにおける経営教育への貢献
カテゴリー区分 その他
発行
著者/編者 キー・ヨン・キム, Ph.D.
経営学名誉教授/韓国延世大学
2006年から2008年の3年間、題名のプロジェクトにアカデミック・アドバイザーとして参加してきました。このプロジェクトは、ビジネス・ケーススタディの手法を通じて、ベトナムの大学における経営教育の近代化をすることを目的とするものでした。そして、プロジェクトの目標が達成された事を心から喜んでおります。このプロジェクトでは、30のケーススタディが刊行されました。ホーチミン経済大学をプロジェクト委託代表とし、フエ経済大学とハノイ農業大学を加えた3大学の経営分野の教授陣によって、これらのベトナム企業に関するケースは、2006年6月から2009年3月までの期間に作成されました。

これら30ケースの刊行は、プロジェクトの成果の一部に過ぎません。プロジェクトの実際の目的は、ベトナムにおいて、経営学の教授陣がケーススタディの手法をより広く、そしてより効果的に授業に導入する事の実現でした。ベトナムは経営教育の進歩を懸命に求めています。経営教育の質は、ビジネス・ケースを教材として作成する教授陣の能力、ケーススタディを基にした授業を行う経験、大学側からのケーススタディの手法導入等に関するビジネススクールへのサポートといった3つの要因に大きく依存します。これらを理由として、このプロジェクトでは、ワークショップでの講義や個人的なアドバイス、企業訪問といったフィールドスタディ、または他国ビジネススクールへの視察を行い、教授陣のケーススタディを用いた教授法のトレーニングに特別な重点が置かれました。

ベトナムでの経営教育における笹川平和財団のケース開発プロジェクトの優れたところは、多国間協力を強調している点です。韓国・日本・シンガポール・中国などから、8人のケーススタディ研究の専門家が招かれました。彼らは、ワークショップ、ケース作成者のフィールドスタディ、ベトナム人ケース作成者の韓国・日本・シンガポール・中国への視察に参加し、ケース作成の指導を行いました。

私は、このベトナム・プロジェクトのアカデミック・アドバイザーとして、プロジェクト全期間に渡り、貢献する機会を持てたことを光栄に思います。プロジェクトに従事する私の特権は3つポイントがありました。第一に、ベトナムの人々・文化・企業・経営教育について知見を広められた事です。第二に、他国から招かれた多くの優れたケーススタディ専門家と交流出来た事です。そして第三に経営教育におけるケーススタディの価値を再認識できたことは、個人的にも大変貴重な経験となりました。

MBA(経営学修士)プログラムに主に代表される経営教育の基本は、生徒に単に知識を与える事だけでなく、様々な問題を効果的・効率的に解決できるように彼らを教育する事にあります。20世紀の産業的効率指向の教育とは違って、21世紀では創造性指向の教育が台頭してきています。情報・知識は大切ですが、どのように新しい知識を創造するのかがより重要になってきています。批判的または創造的思考能力は、他と異なる新しいアイディアの源であり、また競争を生き抜いていく人材の育成に結びつきます。

個人個人が問題解決に対し異なった発想ができるように、ケーススタディは構築されてきました。昨今では、ビジネススクールのプログラムのほとんどで、ケーススタディ法が活用されています。このような状況で、ベトナムのビジネススクールが、早急にケーススタディを重視した教授手法を取り入れ始めることは非常に適切な事だと考えます。笹川平和財団を通して、現地のために作成された30のケースは、教授陣が新学期からの授業にケーススタディを取り入れるのに役立ち、ベトナムのビジネススクールにとって大変意義深いものになると思われます。

これら30に及ぶケースの刊行に際し、ベトナムのビジネススクールの更なるケーススタディ活用推進への提言を、私自身のケーススタディにおける長年の経験に基づき簡単に述べれば、以下のようになります。

まず、第一にベトナムのビジネススクールには、教育プログラムへのより一層のケーススタディ作成・活用のために、更なる時間と努力を継続的に注ぎ込む必要があります。第二に、ケーススタディの活用を促すために、教授陣の成果評価に授業内でのケーススタディ利用が考慮されるような制度が必要とされます。そして第三にいくつかの主要なビジネススクールにおいて、現地のケースの作成に専門的に従事し、それを国内のみならず国際的にも発信し、ケーススタディに基づいた経営教育向上のための研究を行うケーススタディ研究所を設立することが必要です。

ベトナム3大学からのケース作成者による、ケース作成や、ベドナムでの経営教育向上を目指したケーススタディ法学習への専心的努力に対し、心からの賞賛をおくります。

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